巨v雷計画 本文へジャンプ
「迅雷計画」のサブテキスト


「迅雷計画」のサブテキスト第一回 ―統制型発動機「火星」、「金星」について―

 

巻達、迅雷計画の社員は六五年前の世界に様々な技術革新をもたらしましたが、その中でも最たる物の一つが、航空発動機の生産統制です。特に、戦闘機、単発攻撃機、単発爆撃機に使用される発動機は、新たに創設された帝國空軍の元で生産が管理され、三菱「火星」二五型空冷星型発動機(陸軍名称ハ−111)と三菱「金星」四二型空冷星型発動機(陸軍名称ハ−112)への生産統制が行われています。

彗星三三型

つまり、本作のミッドウェー海戦に参戦した愛知艦上爆撃機「彗星」は「金星」発動機を使用した三三型(D4Y3)になっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


また、この改変の最たる物が川崎A8KS2艦上戦闘機「海燕」の採用です。これは川崎キ−61戦闘機に「金星」発動機を搭載した機体で、史実上の川崎キ−100戦闘機、陸軍の五式戦闘機に主翼折り畳み機構、着艦フックを追加した五式戦の艦上戦闘機型に相当します。長谷川正治先生との打ち合わせ不足で挿絵が変な飛行機になってしまいましたが、「海燕」は五式戦の艦載機バージョンで間違いありません(ここは「迅雷計画」刊行時の最大の反省点です)。

五式戦闘機


裏設定では、ダイムラー・ベンツDB601液冷発動機のライセンス生産は、空軍の管理の下に愛知と川崎が合弁会社を設立し、ハ−40液冷発動機として研究開発が行われています。実は、この合弁会社設立については巻と野村、そして川崎の土井武雄技師の間で一悶着あり、野村が土井武雄に平身低頭謝罪する下りを執筆していたのですが、尺の都合で泣く泣くカットいたしました。その時に土井さんにはいくつかの「アメ」を与えているのですが、これらの「アメ」は続巻があれば登場させる予定です。
さらに書いておけば、中島「誉」空冷星型発動機(陸軍名称ハ−43)もまた実験発動機として、空軍の統制の下に研究開発段階に留められています。確かに「誉」は素晴らしい発動機ですが、当時の日本の技術水準から考えれば、「誉」が大好きな方には非常に申し訳ありませんが量産に無理のあった発動機であると結論付けざるを得ません。逆に言えば、何らかの技術革新がもたらされれば量産の可能性もあるのですが、巻達の未来から大型工作機械を持ってくるのは無理があるので、その量産までにはもう一段階の技術革新が必要になります。
ついでに書いておくと、ターボジェット発動機の開発にも冶金技術の革新等が必要になりますが、これについても「誉」と同様であると明記しておきます。なお、種子島少佐は空軍技術廠でネ−12軸流噴進発動機を研究しています。
「迅雷計画」の2巻が実現すれば、次期主力戦闘機として中島A9N3艦上戦闘機「疾風」が登場します。この「疾風」はもちろん「金星」搭載型で純粋な「疾風」ではなく、史実上満州飛行機で開発されたキ−116を艦上戦闘機としたものであることは言うまでもありません。
なお、生産された三菱零式戦闘機はすべて、随時「金星」に換装されます。つまり「迅雷計画」世界での零戦は一九四三年以後すべて五四型/六四型として発動機が換装されることになります。






















 
本サイトの文章に関する著作権は一部を除き、すべて佐原晃に帰属します。 
inserted by FC2 system